革命は過去を救うと猫が言う

量子の社会哲学 革命は過去を救うと猫が言う

量子の社会哲学 革命は過去を救うと猫が言う

副題「革命は過去を救うと猫が言う」。物理学の社会学化の試み。一見トンデモ本のようにも見えるが、そんなに浅はかな内容ではない。一種の神話的な語りだとも云え、とても面白く読んだ。少なくとも、理系の眼から見ても、多少の瑕瑾はあるが、著者の物理学の理解は確かなものである。中でも、最後の「時間論」には興奮させられた。自分も以前から(たぶん拙ブログでも言及している筈である)、「(量子)遅延選択実験」はじつに奇妙な事実を証明すると思ってきたが、著者もこれについて正統的な理解をもち、社会学的な話題と巧みにリンクさせている。「遅延選択実験」は、粒子の過去の状態の、現在からの遡及的な改変を証明しているという他ないが、これは物理学者の視点から見れば、量子力学の奇妙な性質を強化するもので、さほど驚かれないのかも知れないけれども、哲学的には、「現在による過去の改変」とは、驚嘆せざるを得ない。
 このような神話的な仕事が、トンデモだと思われても、科学に対してももっと行われるべきだと云いたい。こんな仕事が何になるなどと、云ってはいけない。このような試みは想像力をとても刺激するものであり、読んでいていろいろなことを考えさせるのである。