- 作者: 上林暁,山本善行
- 出版社/メーカー: 夏葉社
- 発売日: 2011/07/04
- メディア: 単行本
- 購入: 2人 クリック: 40回
- この商品を含むブログ (19件) を見る
自分は最近、変な言い方になってしまうが、何でもない「普通の」人の「普通の」ブログの面白さに気づいたのだけれども、「私小説」の面白さも、それに多少似ているかとも思う。つまらない人生などない、というか。それがすばらしい文章で書かれていれば、なおさらである。
上林暁というと「病妻もの」が有名で、本書にもいいものが収録されているが、決してそればかりでないこともわかった。撰者の思い入れがあるという、冒頭の「花の精」は、庭の抜かれた月見草と語り手の心の動きの描写、さらには再び月見草をもちかえる結末が絶品であるし、高台鏡一郎という不思議な詩人のポートレートである「諷詠詩人」は、しみじみ故人を語りながら鮮やかな印象を残す。いや、どれも甲乙つけ難い。
あわてて付記しておけば、夏葉社の出した本書は、「書物」としてもとてもゆかしい。ちょっと古風な、つつましくも美しい本になっている。