土屋恵一郎の『怪物ベンサム』なる過剰の書
- 作者: 土屋恵一郎
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2012/01/12
- メディア: 文庫
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確かにベンサムの『序説』は「危険思想」である。そこでは社会は伝統的な共同体や歴史から切りはなされて、快感の数値へと組み換えられたからである。社会契約という神聖な近代の出発を否定して、公然と反ホイッグの立場をとった時、ベンサムの社会イメージは、快感と苦痛の数式によって計算され、その物理的条件によって構成された、深度のない、むしろ快感の強度による社会となった。
ここなどを読むと、東浩紀はルソーではなく、ベンサムを読んだ方がよかったのではないかなどと、詰まらぬ感想が浮かんでくるくらいである。ベンサムは、おおよそ衝動というものを感じなかった人間らしいが、こうした彼が「性」や「快楽」ということを大胆に議論の俎上に載せたというのは、面白い話だ。ただしそれは、何故か「不妊」ということと深くかかわっていたのであるが。
なお、本書が中沢新一の仲介で文庫化されたとか、文庫解説が渡辺京二だとかを知ると、なるほどと思わせるところがある。土屋恵一郎、何者だ…