商店街の崩壊を論じた名著
商店街はなぜ滅びるのか 社会・政治・経済史から探る再生の道 (光文社新書)
- 作者: 新雅史
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2012/05/17
- メディア: 新書
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しかし、商店街の規制の及ばない、国道バイパス沿いなどにショッピングモールが出来るようになり、また、商店街の内部がコンビニ化することなどによって、商店街の没落は進行した。自業自得というものである。しかし一方で、コミュニティの担い手としての商店街は、滅びてしまっても困るわけだ。東日本大震災は、そのことを浮き彫りにした。これまでの存在形態を脱却した、新しい商店街の姿が求められるということである。
田舎に住んでいる自分の感想を付け加えると、商店街が自動車で利用しにくいというのは、確かにデメリットである。無料の駐車場があれば、事態が変わるところもあるのではないか。そして、本書でも述べられているとおり、若者が店を構えようと思えるような条件は是非必要であろう。行政の補助というのは、そうした方向にシフトしていかざるを得ないと思う。
議論の背景となる一般論の記述でも、ものを考えるヒントになるものがたくさんある。とりわけ第四章「商店街の崩壊期(1974〜)」での議論は、財政投融資が地方を崩壊させたことなど、同時代史としてとても面白かった。また、これは本筋の議論としても重要だが、商店街の担い手が「核家族」であり、そのことが商店街の崩壊の原因のひとつとなっていることも、重要な指摘である。とにかく、細部まで読ませる新書だ。これからも活躍して欲しい学者である。