難病とユーモアと日本(大野更紗を読んで)
- 作者: 大野更紗
- 出版社/メーカー: ポプラ社
- 発売日: 2012/06/20
- メディア: 文庫
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そして、本書は、著者の言うように「闘病記」だとは云えない。敢て云うなら、自分自身を題材にした、ルポルタージュのようなものかも知れない。日本で難病に罹るというのは、闘病で大変なだけではない。こんな重病人が、充分に入院していられない制度になっているのだ(例の「診療報酬」の制度である)。話としては知っていたが、著者の「オアシス」(入院している病院のことを、そのあまりの素晴らしさに著者が名付けた呼称)ですら、瀕死の重病人を退院させなければならないとは。さらに、病人が自治体の支援を受けるにも、大量の書類が必要となる。死にそうなのに、どうせよというのか。紙切れ一枚が生死を分ける。日本って、そういう国なんだ。
著者に降り掛かってくるのはほとんどが災難なのだが、ポジティヴになれる、いい話もある。よかったですね。そして、この(個人と社会の)ひどい状況を何とかしてやろうとまで前向きになる著者。本書は全篇ユーモアに包まれているが、思わずこちらにこみ上げてくる瞬間もあった。稀有な本です。