弱者はとにかく生き延びよ、ということ(上野千鶴子を読んで)
- 作者: 上野千鶴子
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2012/10/17
- メディア: 文庫
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意外に思われる向きもあるかも知れないが、著者の土台には、平凡な、時としてだらしなくもある「日常」の生活を、徹底して肯定する感覚がある*1。そうでなければ、国家の暴力に反対する思想はやさしいけれど、革命のための暴力まで、それは暴力に過ぎないと、否定し切るのはむずかしいだろう。それは、著者の直感であり、賭けである。テロにせよDVにせよ、弱者の暴力は、結局強者の暴力にやられる。それよりも、弱者は逃げよ、生き延びよと、著者は言う。命以上の価値を持つものなどないと。もちろんこれは、(或る立場からは)簡単に却下してしまえる思想ではある。しかし、徹底したひとつの立場にはちがいない。我々としても、ひとつの立場は根拠なしに持つしかない。著者はそれを、ラディカルに推し進めていく。それこそが著者の学問のような気がする。