鳥居龍蔵の手記
- 作者: 鳥居龍蔵
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2013/01/17
- メディア: 文庫
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本書の面白さは、著者の奔放さにあるだろう。独自に様々な知識を吸収しながら、機会があれば積極的に極東アジアを調査していく彼の姿を見るのは、一種の冒険物語を読むようだとも云える。なかでも、妻と幼子を連れながら、モンゴルの未開地に入り込んで行くところなどは、誰でも驚かされるだろう。だって、大陸において、妻子とともに危険な渡河まで何度もするのですよ。政情だって、安定しているわけではないし。
最後にちょっと指摘しておきたいのだが、著者の人類学・考古学調査は、日本の帝国主義的膨張にピタリと即しているのである(朝鮮、台湾、モンゴル、満洲、シベリア、サハリン、千島列島)。これは、かかる学問の本場であった西欧の事情と、まったく同型である。西欧の場合でも、人類学というのは帝国主義と不可分の関係にあった。著者がそのことに自覚的であったのかどうかは、本書からは読み取れない。もちろんこれは、著者を非難しているわけではない。ちょっと気になったまでのこと。ただ、西欧の人類学者たちも、こんな感じだったのかなとは思った。