ランボー詩の強度ある翻訳

ランボー全詩集 (河出文庫)

ランボー全詩集 (河出文庫)

もとより自分に原文との比較ということができるわけもないので、それはお断りしておきますが、とにかくこの鈴木創士の訳詩には、大変なインパクトを受けました。「ある地獄の季節」に始まる、詩の吐き捨てるような調子は、実にカッコいい。ランボーの翻訳は、伝説的な小林秀雄の訳以来、著名な詩人によるものも含めていろいろあり、特にランボー好きでもなかった自分の手元にも数種類あるくらいですが、大雑把に言って、小林秀雄から離れ、原文に(恐らくは)忠実にという方向に向かったようにみえます。この鈴木訳は、しかし、小林訳へ再び接近し、日本語文学としての強度を回復したといえるでしょう。同時代の日本語としても力があると思います。願わくは出版社よ、この売れなさそうな仕事を、大切にされんことを!
地獄の季節 (岩波文庫)

地獄の季節 (岩波文庫)