フーリエ変換のきわめてわかりやすい教科書

高校数学でわかるフーリエ変換―フーリエ級数からラプラス変換まで (ブルーバックス)

高校数学でわかるフーリエ変換―フーリエ級数からラプラス変換まで (ブルーバックス)

フーリエ変換とは、ほとんどの関数を三角関数(サインやコサイン)の和で表す方法であるが、本書はこれの、実にわかりやすい、魅力的な教科書である。但し高校数学は必須だから、実際は大学初年くらい向けだと思う。語り方もよく、これ以上わかりやすく書くのは不可能と言いたいくらいだ。数式の処理も懇切丁寧である。殆どの人には、本書を理解すれば、フーリエ級数フーリエ変換、さらにラプラス変換まで、充分実用になるだろう。フーリエ変換は、とにかく応用範囲がきわめて広い。物理が好きな人、やりたい人は、とりわけ量子力学で、本書の内容が劇的に役立つと思われる。デルタ関数フーリエ変換など、自分には目から鱗というやつだった。
 本書を読んでいると、数学をわかりやすく書くというのも、能力(と修練)なのだと思う。それは書く対象に通じていることもそうだが、対象についての明確なイメージ、いや、必ずしも視覚的なものでないから原イメージとでもいうか、そうしたものを持っているか否かが大きいのではないか。後は、構成力と文章であろう。その意味でも本書は優れている。お薦めだ。